アメリカ・テキサス州にあるトリニティ大学(Trinity University)の学生さまと先生方が、総勢27名で工房にお越しくださいました!
現地で日本語教師をされている福田真樹子先生が、
『日本の「宮大工」の素晴らしさをアメリカの学生に学んでほしい』との想いでご連絡をくださったことがきっかけで、ご縁がつながりました。
当日は、2グループに分かれて見学と体験をしていただきました。
ビジネス・経営学から経済学、心理学までさまざまな専攻の学生さんが参加されていました。皆さん、宮大工の仕事に興味津々です。
日本に1ヶ月間滞在しながら、様々な伝統文化に触れるというプログラムの一環で、匠弘堂にお越しくださいました。
建築という側面から日本文化の真髄に触れていただければと思い、心を込めてご案内させていただきました。
その①匠弘堂代表取締役社長・横川によるレクチャー
まずは、日本の社寺建築の根底にある「木」の文化について、風土との関わりから解説しました。
毎年梅雨の時期が訪れ、台風・地震などが頻発する日本では、修理や建て替えを前提とした木造建築の技術が発展してきました。
修理を続け、建物を守っていくということは、そこで技術が継承されていくということを意味します。その建物が作られた時の状況や意図を読み取り、精神性を理解することが、正しく形を守っていくことに繋がります。
そのことが顕著にわかる例が、鎌倉時代の絵巻物に描かれています。なんと、現代の宮大工と同じ道具を使っているんです!
その②継手仕口を触ってみよう!
傷んだ部材を一部だけ取り替える際に重要なのが継手と仕口。
パズルのように複雑な形状と、強固な構造にみなさんとっても驚かれていました。
はめ込んで栓をしてしまえば、引っ張ってもびくともしません。
栓がなく、はめ込むのが難しい「バサラ継ぎ」にも挑戦。
試行錯誤、四苦八苦の末・・・見事にはめることができました!
パズルのように頭を働かせ楽しむだけでなく、熱心に継手の形を観察したりと、とってもエキサイティングな経験だったようです。
その③台鉋・槍鉋の体験
レクチャーが終わったら、工房に移動して鉋がけの体験をしていただきます。
まずは室町中期頃に生まれた「台鉋」(だいがんな)から。
カンナくずを鉢巻きがわりに、気合十分!
薄く均等に削り続けようと思うとなかなか難しく、みなさん苦戦されていました。
姿勢や力の入れ方を一定に保つのは、やはり一朝一夕では習得できない至難の技といえます。
中には、アメリカで大工仕事に親しんでいて、素早くコツを掴む方もいました。
台鉋の次は、さらに難しく伝統的な手法である「槍鉋」(やりがんな)にチャレンジ!
槍鉋の原型は、なんと弥生時代頃からあったとされています。
持ち方、姿勢からみっちりと教えてもらいます。
左手を腰につけ、重心を安定させるのがポイントです!
福田真樹子先生も、学生さんたちに負けじと挑戦^^
苦戦するかと思いきや・・・何度もトライする中で、だんだんとコツをつかみ、美しい削り面を生み出していました!
代わる代わる「もう一回!」とチャレンジするみなさん、とっても楽しそうでした。
本日の最長記録!
自分の削ったカンナくずは、記念に持って帰っていただきました。
国に帰っても、この経験をどこかで思い出してもらえれば嬉しいです。
学生さんからは、以下のようなご感想をいただきました。
匠弘堂では、メンバー全員に能力があれば、少人数のチームがいかに効果的であるかを知ることができました。小規模なチームでありながら、彼らの手がけるプロジェクトがいかに大規模で複雑なものであるかを目の当たりにしたことは、本当に素晴らしかったし、勇気づけられました。自分の専門分野でも、そのレベルの熟練度に到達するために、自分のスキルを磨きたいと思わせてくれました。
一番印象に残ったのは、大工道具を実際に使わせてもらえたことです。デモンストレーションをしてくれた男性は、1、2度使い方を教えてくれただけで、その後は私たちが本当に必要なときだけ手を貸してくれました。道具をいかに使えばうまく削れるのか、自分たちで発見する自由を楽しみ、それをとても心地よく感じました。授業ではなく冒険のようでした!
私は日本の神社やその他の伝統的建築を高く評価してきましたが、それらを維持するために必要な職人技について考えたことはありませんでした。この訪問で私が一番気に入ったのは、200年以上先の未来に、修理のために解体することができるように、建築物やメンテナンスが行われなければならないという事実についての議論でした。彼らの職人技における気遣いのレベルはとても意義深く、誰もが訪れるべきものです。
私は匠弘堂を訪れながら、 職人技(mastery)についていろいろと考えていました。自分たちで体験する機会をいただき、その動作を再現してみると、彼らの技術に費やされる時間と労力に大きな尊敬の念を抱きました。体験で完璧なカンナ屑を削り出すことができて満足でしたが、職人たちの完璧さとは異なり、私たちの動作には一貫性がありませんでした。自動化することの意味と、その原理が職人のそれと密接に関係していることについても考えさせられました。
匠弘堂での経験は、予想以上に楽しかった!匠の技とは何か、匠の技を身につけるにはどれだけの努力が必要なのか、とても勉強になりました。最初はそれほど複雑には見えない技術も、予想以上に難しいものでした。匠弘堂の仕事には非常に多くの技術、時間、忍耐、バランスが必要とされます。カンナがけは適切な圧力を一貫してかけなければならず、その方法を学ぶのは自分にとっての挑戦でした!プロフェッショナルの方々の指導のもと、間違いながらもそこから学ぶことができて楽しかったです。この経験を通して、私は技術への理解が深まり、職人技の概念とその複雑さをよりよく理解することができました。
このようなご縁をつないでくださった福田先生、そして学生の皆さま、貴重な日本滞在期間中に、匠弘堂へ足をお運びくださりありがとうございました!
また来年、お会いできる日を楽しみにしております^^