2018年10月、京都市下京区にある圓徳寺の改修工事を匠弘堂がおこないました。
若い会社に大事な改修工事を依頼することが、はじめは少し不安だったという圓徳寺のご住職。匠弘堂の「目に見えない仕事」へのこだわりを見て、その不安が信頼感に変わったといいます。ご住職と匠弘堂の横川が、あらためて改修工事を振り返りました。
◆真宗大谷派 圓徳寺
御本堂は元治元年(1864年)7月の禁門の変により焼失し、昭和4年に再建された。総台湾桧造り、小屋組み形式を洋小屋トラス構造としており、モダンで斬新なデザインが随所に見られるお寺。
【プロフィール】
圓徳寺 ご住職(写真右)
圓徳寺 若住職(写真中央)
匠弘堂 代表取締役社長 横川総一郎(写真左)
疑心暗鬼のお問い合わせが、「安心」に変わるまで
横川総一郎(以下、横川):圓徳寺さんは、インターネット検索を通じて匠弘堂のことを知ってくださったんですよね。匠弘堂にとっても、ホームページからご連絡をいただいた初めての案件でしたので、とても思い出深いです。
圓徳寺 ご住職(以下、ご住職):そうでしたね。本堂が雨漏りするようになってしまって、はじめは修復を知り合いの工務店に頼もうと思っていたんです。ただ、その工務店の大工さんが80歳近くになられるということで、少し不安もありまして。知り合いにいい会社がないか聞いてみたのですが、なかなか見つからず悩んでいたんです。
そこで、インターネットで社寺建築の会社を検索してみたら、ホームページをきちんと作っているところがほとんどない中で、匠弘堂さんのサイトを見つけたんですよ。そこに載っていたこれまでの実績が豊富だったので、問い合わせてみようかなと思ってご連絡をしました。
ただ、正直に言いますと、まったく知らない若い会社に依頼をするということに対して不安がゼロだったわけではないんです。匠弘堂さんのサイトには、初代棟梁の岡本さんが2015年に亡くなられたということも載っていますよね。先代が亡くなってから、会社が悪い方向に変わってしまう……というのはよくある話なので。この会社はどうなんやろな、大丈夫かな、とは少しだけ思っていました。
そこで匠弘堂さんのサイトの実績ページに載っていたお寺さんに電話をして、実際のところどんな会社なのかを聞いてみたら、「真面目で誠実な会社ですよ」と言ってくださって。そのときにようやく、安心してお任せできそうだなと思いました。
横川:他のお寺さまにもお電話されていたというのを、いま初めて知りました。そんなご心配をおかけしていたとは……申し訳ないです。でも、そうやって周りの評判を聞いた上で、納得してうちに決めていただいたというのは、ありがたい限りですね。
ご住職に最初に連絡をいただいたとき、ホームページがきっかけで匠弘堂を見つけてくださったというのを聞いて驚きました。早くお会いしたい、と思って、お電話いただいてからすぐに圓徳寺さんに足を運んだのを覚えています。
檀家さまへの“プレゼン”があったから、納得してもらえた
横川:一度僕ひとりでご挨拶をさせていただいたあと、棟梁も連れて、改めて現地調査をしに行かせていただいて。前回の工事はおそらく100年近く前だったと思うのですが、非常に珍しいことに、当時使用された図面が残っていたんですよね。その図面を見せていただいたとき、「これはちょっと普通のお寺じゃないぞ」と直感的に思ったんです。
実際に見学をさせていただいたところ、お寺の外観や内装が美しいのはもちろん、軒先の垂木が1本1本綺麗に反り返っていたり、彫刻の仕事がとても丁寧だったりと、一流の設計士が手がけた建築であることは一目瞭然でした。そんなお寺を見られたことが僕も嬉しくて、会社に戻ってから、「いい御本堂だった……」と思わずつぶやいたのを覚えています。
ご住職:その現地調査のあとに、雨漏りの原因を特定していただいて、どういった改修をおこなうかというのを図面でプレゼンテーションしてくださったんですよね。あのプレゼンが本当に分かりやすくて、とても安心感がありました。
横川:ありがとうございます。雨漏りの原因が分かったとしても、それを解決するためのアプローチは何通りもあるので、採用する方法のメリットを理解していただくためにはプレゼンしかないと思ったんです。それに、私たちの仕事にかける思いを伝えたかったというのもあります。
ご住職:総代会でもスクリーンとプロジェクターを持参して説明してくださったので、檀家さんたちにもお金の使い道をきちんと理解していただき、改修工事に納得してもらうことができたのだと思います。
それから、匠弘堂さんのご提案で、2018年のゴールデンウィーク前には檀家さん向けの見学会もしていただきましたよね。屋根の裏側を見せていただいて。普段は見られない部分を見られて嬉しい、という声や、匠弘堂さんの対応が丁寧で安心した、という声が参加された皆さんから寄せられて、私も嬉しかったです。
横川:そう言っていただけると安心します。私たちにとっては「いつもの工事」でも、お寺さまや神社さま、そして檀家さま、門徒さまにとっては、50年に1度、100年に1度あるかないかの機会なんですよね。ですから、改修工事がどのように進められているかを実際に見ていただくことは記念にもなりますし、安心につながると思って大切にしています。
「見えないところほど気配りをせなあかん」という言葉を体現している宮大工たち
ご住職:見学会でいちばん驚いたのは、すべての柱に“根継ぎ”(※建物の歪みなどが原因で、時間の経過とともに柱の長さが足りなくなる部分をジャッキアップし、材木を継ぎ足す作業)をされていたことです。正直、「ここまでやるのか!」と思いました。岡本棟梁の「見えないところほど気配りをせなあかん」という言葉は匠弘堂のホームページでも拝見していて印象的だったのですが、まさにこれを実践されているなと。
横川:岡本棟梁のその言葉は、私たちも会社の中で合言葉のように使っています。普段通りの仕事ぶりを高く評価していただけるのは、本当にありがたいですね。
ご住職:今回の改修工事で、本堂に貼られていた金箔にヒビが入ってしまったりすることを多少は覚悟していたんです。でも、そういうこともまったくなくて。本当に完璧な仕事でした。
横川:圓徳寺さんの工事では、近隣の方々のご協力にも非常に助けられたんです。圓徳寺さんは住居が密集している町家エリアの真ん中にあるので、近隣のお宅との距離がとても近いんですよね。駐車スペースや資材置き場をどうするかにも悩んだのですが、特に難しかったのは足場の組み方でした。鳶さんとも相談をしながら、近隣の方々にできるだけご迷惑をかけないよう、複雑な組み方をした記憶があります。
それに加え、工事が始まる前の2017年末から2018年のはじめにかけては、ご住職さまと一緒に近隣のお宅を回らせていただいて。そういったこともあってか、近隣住民の方から苦情をいただくことも一度もなく、無事に工事を終えることができました。
ご住職:圓徳寺にも、一度も苦情はなかったですよ。匠弘堂さんの創意工夫と近隣の方々のお心遣い、どちらもあったおかげで無事に改修工事を終えられたのだと思います。
「匠弘堂を選んでよかった」という言葉のために、努力を惜しみたくない
ご住職:今回の工事は雨漏りの対策が中心だったので、お寺の見栄えに大きな変化はなかったんですよね。工事の途中経過を見ていない門徒さんからは、「あれ?どこが変わったの?」という声もありました。
私たちがいちばん感動を覚えたのは、完成した本堂を見たときではなく、その過程です。先ほどもお話しした見学会の際に、匠弘堂さんの底力を感じさせられました。目に見えない仕事のすごさが分かるように、天井をガラス張りにしてくれればよかったのに、と思っているくらいです(笑)。
横川:そこまで言っていただけるのは本当に光栄です。実は今後、門徒さま向けの工事報告会をさせていただくのもいいのではないか、と思っています。工事の開始前から完成後まで、「匠弘堂を選んでよかった」と思っていただくための努力はひとつたりとも惜しみたくありません。そこまでやるのが、私たちの使命だと思っています。