- 2013年
- 19歳で匠弘堂入社。山梨から遠く離れた京都へ
- 2017年
- 外の世界を見てみたくなり、匠弘堂を退職。地元の建築会社に転職。
- 2018年
- 匠弘堂に「戻りたい」という気持ちが確信になり、再就職
山本 択哉
プロフィール
1994年生まれ、山梨県甲府市出身、O型、動物占いはコアラ。
特技・趣味
映画鑑賞/ぶらり旅/アシモくんの真似
山本はかつて、匠弘堂を一度退職したことがある異色の経歴の持ち主。
匠弘堂を一度離れ、その後戻ってきてから3年が経った今、変化した仕事観、後輩に対する思いなどを率直に語ってもらいました。
「自分で何とかする」という意識が強くなった
3年前と比べて一番成長したと感じるのは、責任感が強くなったことです。
「自分の力で何とかしなければ!」という意識が芽生えたのは、匠弘堂に戻ってきて最初にたずさわった徳島県のD寺の庫裡客殿新築工事でした。この3年間でも特に印象に残っている現場で、有馬棟梁から初めて「墨付け」を任され、とても驚いたのと同時に嬉しかったことを覚えています。
墨付けは木材の加工を行う前に加工する部分に印をつける、とても責任の重い仕事です。
もちろんその重要性を十分に理解していたので、20枚近くあった設計図面を何度も見て、徹底的に頭に叩き込んで作業に臨みました。あの時の緊張感は、今でも忘れられません。
D寺で責任を持って墨付けをやり遂げ、大きなミスもなく建て方ができた経験は、今の自分を形作ったことの一つだと思います。(先輩方のサポートにも感謝しています)
他には、プライベートで結婚して家族を持ったことも、責任感が強くなったきっかけかもしれないですね。
守るべき人ができて、単純にもっと仕事を頑張ろう!という気持ちが強くなりました。家族と散歩がてら神社やお寺を見にいくこともあるので、子供にも自分の仕事に興味を持ってもらえると嬉しいな…と密かに思っています(笑)。
人の仕事を「綺麗」だと感じる。それは造形に限ったことではない。
高卒で匠弘堂に入社して間もない頃、今の副棟梁である小滝さんから「匠弘堂のメンバーに限らず、いろいろな人の仕事を見に行きなさい」と教わりました。それから同じ現場に関わって一緒に仕事をする方はもちろん、プライベートで見かけた鳶職の方や宮大工以外の大工さんなどの、仕事の様子を見るよう意識しています。
その仕事を見ていると、建物は一人の力ではなく、施主さんがいて、設計士さんがいて、大工さんがいて、瓦屋さんがいて、左官屋さんがいて・・・と、多くの方の協力で成り立っていると改めて実感したのです。
特に社寺建築は、何十年、何百年も残るものになるため、品質上の弱点は決して許されません。そのためにも、チームワークはとても重要なんです。
全員が周りに気を配り、チーム一丸となって作業を進めることは、良い仕事をするために不可欠だと思います。
岡本棟梁の「12の教え」の中では”感”が一番好きです。これは「宮大工は見られるのが仕事 見られる商売や つまりわしらの仕事は 感動を届けることや それにはまず 己が感動せなあかんわな」という言葉です。
この岡本棟梁の言葉を知ってから、感情を研ぎ澄ますことを意識するようにしました。すると匠弘堂のメンバーの仕事でも「綺麗だな」と感動することが増えたんです。それは、造形に限ったものではなく、丁寧だと感じる仕事、例えば所作や道具の使い方など多岐にわたります。
そんなメンバーを見ていると、自分ももっと丁寧な仕事をしなければと気が引き締まります。そして、他の人が行った仕事の丁寧さに、今よりも多く気づける人でありたいと思います。
先輩にしてもらった「気付き」を、後輩にしてあげたい
匠弘堂のメンバーはみんな仲が良いのですが、特に副棟梁の髙橋さんとはたまに飲みに行っています。酒の場でもやっぱり仕事の話題が多いんですよね(笑)。だから、髙橋さんはじめ、匠弘堂のメンバーはみんな本当に仕事が好きなんだなと感じます。
匠弘堂に戻ってきてから3年、後輩が3人入ってきて指導する立場になりました。
僕は基本的に話すのが苦手で、作業に集中すると周りが見えづらくなることも…。なので、後輩が困っているときにサポートが少し遅れてしまうなど、先輩として至らない部分もまだまだあるなと感じています。
ただ「人の仕事をよく見る」ことを心がけているからか、後輩の良いところやうまくできた仕事については、よく気づける方だと少し自信を持っています。
特に入社して日が浅いと、自分でうまくできた!と思った仕事でも、先輩にアピールしづらいですよね。だから、良い仕事を見つけたら、何がどう良かったかを本人に直接伝えるようにしています。
こんな風に、僕が後輩に対して良いところを積極的に褒めるようになったのは、匠弘堂の先輩方の影響が大きいです。匠弘堂には、技術面はもちろん、人間的にも憧れの先輩がたくさんいます。
例えば、以前僕が悩んでいるとき、いち早く髙橋さんが気づいて声をかけてくれたんです。そこで話を聞いてもらえて、心が軽くなりました。そして何よりも、口に出していないのに声をかけてくれたことに対して「僕をしっかり見てくれているんだな」と感じ、本当に嬉しかったです。
僕も髙橋さんのように、後輩が悩んでいたらそれにすぐに気づいてあげられる、遠慮なく話をしてもらえるような存在になりたいと思っています。
信頼されることは、人間性を磨くことでもあると思う
改めて、宮大工の仕事をとても誇りに思っていますし、ずっとこの仕事を続けていきたいです。
今目指しているのは「この人に任せたら大丈夫!」と信頼して仕事を託される宮大工です。
信頼を得るためには、何をすれば良いんだろう・・・と思い返した時、技術を磨き続けるのはもちろん、それとは別に「人間性」も育てていくことが必要だという考えに辿り着きました。
「人間性を育てる」と口で言うのは簡単ですが、実際には長い時間がかかります。
匠弘堂の中だけではなく、お客様にも信頼される宮大工になるため、まずは岡本棟梁の教えを心に留めて実践し、人間の豊かさを培っていきたいと思います。
日々の細かなこだわりや、小さな良い仕事を一つひとつ積み重ね、一歩ずつ理想の姿に近づいていきたいです。
そのためには当たり前ですが、どんな仕事でも丁寧に、自分の考える「きれいな仕事」ができるように頑張りたいと思っています。
おわりに
匠弘堂のメンバーは全員、お客様に対する強い思いと誠実さを持っています。僕も匠弘堂の名に恥じぬよう、これからも日々コツコツと丁寧に仕事をしていきたいです。これからも、よろしくお願いします!!
今後の意気込み
後輩に「ずっとこの会社にいたい」と思ってもらえるような姿を見せる