匠弘堂

宮大工棟梁の岡本弘と、その意思を受け継ぐ若い宮大工の技術集団、匠弘堂。
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コラム

横川社長担当 私が建築に目覚めた瞬間(とき)

第1話 雪の金閣寺

第2話 歴史マニア?

第3話 三歳の記憶

 

有馬棟梁担当 宮大工として生きる

第1話 棟梁と弟子

第2話 夏の決意

第3話 ありのまま

 

匠弘堂 スタッフコラム

担当:光富 被災地を訪ねて

担当:藤田 ツルは、本当に何も知らんなぁ・・・。

担当:武田 活きる場所

 

コラム

横川社長担当コラム有馬二代目棟梁担当コラム

 

匠弘堂 スタッフコラム 毎回、テーマと担当者を変えてお送りする、読み切りのコラムです。

担当:藤田 ツルは、本当に何も知らんなぁ・・・。

現在のホームページをご覧の皆様は、ウチの会社は若い大工が多く、とても活気のある会社に思われているかもしれません。けれど、僕が入社した当初の匠弘堂といえば、実は還暦を超えたベテラン大工ばかりの会社でした。

入社したての僕はもちろん初めて見る大工の仕事に、毎日、胸を躍らせておりました。ベテラン大工の仕事の手元に入ったり、作業場や現場の片付け、出張仕事ともなれば宿舎でみんなの食事を作ったり(とても人に食べさせられるような食事ではありませんが)と、とにかくみんなのそばで一緒に仕事をさせてもらうのがとても楽しかったのです。

そんな仕事の休憩時間や出張仕事の夜などは、本当にいろいろな話をみんなから聞かせてもらいました。本当に興味深い話が多く、今も心に残る話ばかりですが、その大半は公には話せないものばかりですが・・・(汗)。その中で今日は表に出せる話をしてみたいと思います。

僕が記憶に残っている光景の中では、これからお話するような人たちを見たことはないはありません。この話を聞いてくださるみなさんの中には、ご存知の方もいるかもしれません。昔の職人さんて今の人間には想像のつかないことをやってのけていたみたいです。

ある日の休憩時間、ひょんなことから鉄骨造建築の鍛冶屋さんの話になりました。「今は鉄骨を組み立てる時には溶接やボルトで組むのがあたりまえだけど、昔はリベットってもんで組み立ててたんだ。その鍛冶屋の親方はなあ、姿の見えない上の職人が鉄骨をたたいてリベットのサイズを知らすと、火の中から長い火箸で焼けたリベットを取り出して、さっきの職人の所にその火箸で投げて渡すんだ。そうするとな、姿の見えない職人が鉄のバケツのようなもので受け取って、うえでカンカンたたいて鉄骨を組むんだ。でもな、不思議なことに投げたリベットが姿の見えない職人にちゃんと届くんだよ。よく聞いてるとなそのバケツのようなものに入った時に上でカラカラって音がするんだ。」
見えない人間に火箸で投げてちゃんと届くなんて、とても信じがたい話ですが、その話を聞いていると不思議とその光景が想像できたんです。それまでにベテラン大工たちが僕に見せてくれたいろんな仕事が「ひょっとすると本当にできるかも」って思わせるんです。
「僕が想像する以上に人間ってものすごい能力があるのかもしれない!!」

今は、機械やコンピューターが想像もつかない仕事をやってくれます。その環境に慣れすぎていた僕は自分で人の限界を勝手に決めていたように思います。今はそういった話や、人を見る機会もなくなってきてしまっているのがさみしい気もしますが、そののちに僕も「こんな奴がいてなあ、すごいことをやってのけたんだよ」なんて誰かに話してもらえるような大工になっていけたらなあ・・・、なんて思っています。

何だか最近、無性に「何も知らんなぁ」って笑われながら、みんなの話を聞いていたころが懐かしく思います。